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『The Future of Food』~遺伝子組み換え食品に関するドキュメンタリー映画~

2005年9月26日

Future of Food

ムービーバトンについて書いた時、「今、一番見たい映画」として挙げたうちの1つ、『The Future of Food』を土曜に同居人ダーリンと一緒に見てきた。(写真は、映画館に置いてあったオーガニックのミックスレタスの種の袋。双葉は、先週だかに植えた二十日大根、ラディッシュの「ダヴィニョン」という種類。)


GMO (genetically modified organizm)とか、GE food (genetically engineer food)と俗に言われる遺伝子組み替え食品に関する初のドキュメンタリー・ムービー。私は今、『Eating in the Dark: America's Experiment With Genetically Engineered Food』という同じく遺伝子組み替え食品を取り上げた本を読んでいるところで、健康食の料理学校でも少し習ったし、ウェブで調べたりしておおよそのことは知っているつもりだったけど、頭の中がよく整理されたし、衝撃の事実もあったし、ドキュメンタリーとして優れていたし、本当に見ておいてよかった。

近代農業の発達の歴史から話が始まって、遺伝子操作食品の問題点について、科学者や弁護士、農夫がインタビューされ、モンサントをはじめとするGEの種&農薬を作っている会社)の論理に、正面きって科学的にも倫理的にもおかしいと言い切れている素晴らしい映画だった。膨大なリサーチ結果が、すごくよく整理されていて、これを見れば遺伝子操作食品問題、概要は全てわかるので、上映している地域の人は、何を置いても是非見に行って頂きたい。(上映スケジュール情報:ニューヨークは、Film Forumで27日まで)

大豆は国産に決めてる、遺伝子組み替え食品なんて食べてないと思っている人がいるかもしれないので、現状についてここで簡単に説明すると、アメリカでは、1995年に市場に並び始め、Food Safety Research によると2002年には大豆70%以上、トウモロコシ25%、キャノーラ50%(カナダから原料のrapeseed 菜種を輸入)、綿70%近くがGE。

市場に出回っているのは、これらに加えてパパイヤとスクアッシュ。商業利用が既に許可されているのが、更にジャガイモ、トマト、米、フラックス/亜麻、シュガービート/てんさい、スイートコーン、メロン、ラディキオ。キャノーラや綿は油として、大豆はレシチンとしてコーンは主にコーンシロップとして加工食品に含まれているので、オーガニックじゃない加工食品、ジャンクフードはGEフード入りの可能性が非常に高い。実際、市場全体の食品の60~70%に何らかの形でGE素材が含まれている。

農産物輸出大国であるアメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、チリ、アルゼンチンが遺伝子組み替え農産物を商業栽培しているので、食糧自給率が著しく低い日本のような国にとっては、無関係ではすまされないわけですね。

遺伝子組み替え食品、当然作っている側は安全だと主張している。百歩譲ってそうだとしても、通常あたらしい医薬品や化粧品、食品が許可を得るために必要な実験(動物実験の後に人間で実験)が提出されないまま出回ったのはおかしい。医薬品や化粧品はラボで作るから、「あ、失敗しちゃった」ですむけど、農産物は、当然、畑で作っているわけで、その畑っていうのは自然界から隔離されてないので、生態系に何らかの影響を与えるのは必至で、この先どんなことが起きるのか、誰もわかってないのが現状。無責任過ぎる。

FDA(米国農務省)やEPA(米国環境保護庁)が、通常の許可へのプロセスをなぜ踏まなかったのか?政治の匂いがするなとは思いつつ、私がこれまで読んだものの中には書かれてなくて、こんなおかしなことがなぜ今もまかり通ったままのか、ずっと疑問だったんだけど、映画を見て、FDAやEPAの役員には、モンサントと過去に関係があった要人がごろごろいるということがわかった。納得したけど、衝撃の事実だった。

モンサントは、自社のGMO種子にパテントを取っていて、農家に種を保管して来年植えることを禁止しているから、農家は毎年新たに種を購入しないといけないので儲かるという仕組みがある。隣のGEフード畑で実を食べた鳥がやってきて糞をしたり、種や花粉が飛んできたりして、植えてないのにGE品種が育ってしまった農家は、モンサントから「うちの種を勝手に植えやがって」と訴えられ、ほとんどの農家は裁判で戦う費用も労力も時間もまかなえないから泣き寝入りで罰金を支払う。モンサントは、種が来年植えられないよう、子孫を残さない種のパテントも持っていて、その共同パテント保持者が、アメリカ合衆国政府っていうシーンでは、怒りを通り越した笑いが漏れてた。GE作物を育てている農家もコスト高で、政府の補助金で経営が成り立っているというのも初めて知った。ここでも政治絡みなのね。

GEフードを避けたい人は、オーガニック認定食材を選ぶのが一番手っ取り早いわけだけど、そうでない加工品を買う時は、パッケージをよくチェックしましょう。

遺伝子組み換え食品についてもっと知りたい方は、「食政策センター・ビジョン21」主宰の安田節子さんのサイトの遺伝子組み換え食品FAQをまずはご一読下さい。

http://www.yasudasetsuko.com/gmo/faq.htm

≪資料本≫

●『食べてはいけない遺伝子組み換え食品>』著:安田節子

●『遺伝子組み換え企業の脅威―モンサント・ファイル』著:「エコロジスト」誌編集部 翻訳:安田節子

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