フランス

ミシュラン三ツ星50年、ポール・ボキューズへの道。シェフの訃報を受け、追悼リライト【前編】

2018年1月22日

ポール・ボキューズ・レストラン外観、斜め

この記事は、2005年に、フランスで料理修行をしていた友人Yちゃんと、フランス一周グルメ食べ走りをしたときのポール・ボキューズ詣について書いたものです。2018年1月20日、偉大なるシェフ、ポール・ボキューズ氏の訃報を聞き、読み返すと、12年半前のことなのに、あのときのハラハラや喜びが鮮明に蘇ってきました。

ポール・ボキューズさん、長い間、フランスだけでなく、世界の料理界を牽引。ありがとうございました。
無名の食いしん坊である私たちを温かく迎えて頂き、世界最高のお料理を食べた経験は、私にとって一生ものです。

コンピュータを掘り起こすと、当時載せなかった写真が出てきたので、追悼の意味をこめ、全ての写真を大きなサイズにした上で追加し、加筆修正しました。
前編・後編ともに、ごゆるりとどうぞ。人生は旅、ボナペティー!

 

本場のブラッセリーでランチを食べた後はリヨンの街中をあちらこちらと散策して、なんとか腹ごなしを試みた。だって夜はミシュラン三つ星レストラン、かのポール・ボキューズ詣だからね。まぁ、ここに辿り着くまでにもいろいろ波乱づくしだったのだが、話すと長くなるので、着いた所から。(それでも長いんですけど。)


みなさま、正面に見えますのがポール・ボキューズでございます。もう、参拝するにふさわしい見事な外観。

ポール・ボキューズ・レストラン外観、正面

ポール・ボキューズ・レストラン外観、正面

そして、そして、ほら、ポールさんがいらっしゃいませとお出迎え。

シェフ、ポール・ボキューズさんのお出迎え♥壁画

もう、なんか、このセンス、どうなの? 冗談なんだか、本気なんだか。ダサいんだか、素敵なんだか。夢見てるみたいな感じ?わけがわからなくなってクラクラした。壁画のポール・ボキューズ料理長を見ただけで降参。あぁ、来て良かった。もう後悔ないわ。って、違う違う。食べないと。

だって、遠方の安宿ユース・ホステルからカーサービスを使って、やっとの思いでたどり着いたわけで。同行者Yちゃんとともに感極まって外観を記念撮影してたら、送迎のためだけに働いているTOKIOを歌ってた時の沢田研二(古くてわからない人、ごめんね。。。)みたいな衣装の人たちが、頼みもしないうちから写真を撮ろうかと言い寄ってきたので、そう?と遠慮なくドアの前でとってもらうことにした。

「この、「ポ・ゥ・ル・ボ・キ・ュ・ゥ・ズって書いてあるのをちゃんと入れてね!」って言ったら、そんなこともう百万回くらい言われてるんだろう。はいはいわかってるよって感じでこう。

ミシュラン三つ星、ポール・ボキューズ玄関

フランス料理修行のためにパリに住んでいたニューヨークの友人Yちゃん(写真左)に予約入れてもらっていたので、無事記念撮影を終えた後、ウキウキどぎまぎしながらレストランへ。

ピカピカゴールドのドアを抜け、レセプショニストで彼女が名前を告げると、想像だにしなかったお答えが。

「そのようなお名前では、本日ご予約いただいておりません」。

え?

二人して受付で固まってしまった。

「Yちゃーん!」とすがると、

「すみません。予約の再確認するの、忘れてました」と、私の目をみないまま、斜め下の床に向かってぼそっと。

え?え?え? 何それ。こんな僻地までタクシー乗ってやってきて、今日、食べられないの? まぢ? それは、もしかしたらおもろい土産話にはなるかもしれないけど、この件に関してはウケよりも自分の満足を優先したいんだけど・・・。だって、多分、一生に一度のポール詣だよ〜〜〜?!?!

後から到着したお客さんが、次々にダイニングルームに案内されていくのに、私たちは、入り口から3mの所で足止め。3つ星がついてるようなレストランなんて、一晩に一回転(1つのテーブルは一晩中1組のお客さんのもの)だから、この時点で席がないってことは、今晩は無理なのでは・・・という極めて真っ当な想像をし、青ざめる私たち。

そしたら、なんと、シェフのポール・ボキューズ先生が!テーブルでお客さん達にファンサービスをして厨房に戻るところだった。挨拶をして握手をお願いすると気さくに応じてくれて、感激。もうこれで帰ってもいいかなという気に一瞬なるが、そんなわけない。粘らなくては。

受付の人とやりとりしてると、Yちゃんの名前、その日のランチには入っていたことが判明。ランチをディナーに変更したのが、変更されていなかったのだ。お、これはお互い様ではないか!ということで、予約の確認をしなかったことには触れず、ディナーに変更したということで通すことにした。

まぁね、流石ミシュラン三つ星レストラン。料理やインテリアだけじゃなくて、サービスも最高峰。はじめっから、例え予約を入れた日が間違ってたとしても、できることならなんとかしてくれようというナイスな応対ではあったけどね。でも、なんせ、満席ですから。

数人のスタッフが入れ代わり立ち代わり、予約ブッキングの大きなファイルをチェックしたり、店内のテーブルを確認に往復したり、スタッフの人同士で何やら非常事態な空気ムンムンでやりとりがあった後、立って待ってるのもなんだからと、ダイニングルームへと向かう通路のソファに案内される。よ、4m前進!! あぁ、テーブルまではあと3m?

アペリティフがサービスで出てきた。様子がよくわからない。
「ここで食べさせてくれるのかなぁ?」(んなわけない)
「厨房でもいいかもね」
とか言いながら、立派なメニューを広げ、ありつけるかどうかさえわからない料理の名前を食い入るように読みながら待つ私達。

その間にもお客さんは次々到着しては席に通されていく。
みんな、「この日本人は、ここで一体何をしてるの?」っていう戸惑いと同情の視線を送りながら私たちの前を通り過ぎていくのであった。

「ここまで来て食べられなかったら、どうだろう?」と私が言うと、「私は絶対食べます!」と鼻の穴を膨らませるYちゃん。
すごいガッツ。旅の間中、ずっと食後は正露丸ライフなのに。思わずひるんでしまった。

かれこれ待つこと30分。受付の人が戻ってきた。ついてきなさいだって。わーい♥なんとかなったみたい!でも、違うところに連れて行かれる。「特別お客さま席なんじゃない?得したね」とあくまで前向きな私たち。厨房の前を通ると、またまたポール・ボキューズさん。おいでおいでって言ってる。

待たせたお詫びの大出血サービス。なーんと、厨房の中で、ポールさんを中心に私たち、そしてあと2人(思うにスーシェフとパティシェ)5人で記念撮影してくれた。もう、この写真は一生の宝でございます。2枚も見せびらかしちゃうよ!

ポール・ボキューズの厨房でシェフと記念撮影
ポール・ボキューズの厨房でシェフと記念撮影

というわけで、やっとテーブルに。2階にも部屋がいくつかあって、その1つに通された。目の前にはポール・ボキューズのロゴ入りのパン皿、色といい柄といい、すごいかわいい。これは売り物ではないのかなぁ。欲しいなぁ。ここまで辿り着くのに苦労したんで、お皿だけで感激したよ。

ポール・ボキューズ・レストランのロゴ入りお皿

こんなに長々と読んでも、まだお料理が出てこなくてごめんねー。後編では食べてるよ〜。
ミシュラン三つ星、ポール・ボキューズへの道 (後篇)につづく・・・

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