料理にしてもアートにしても、写真がメインの本って、和書、洋書かかわらず、ぱらぱらっと眺めて終わりということが多い(それでもすごくためになると思うから買う)んだけど、これは隅々まで一文一文飛ばすことなく、じっくり読んでしまった。全174ページ、160ページまではカラーの本で、分厚い本ではないけど、写真だけざーっと見て、もう一度読み返して、読破するには結構時間がかかった。非常に密度の濃い本。
タイトルが『器と料理~新しい器づかいの極意』で、内容もそのままそういうことなんだけど、構成がおもしろい。15人の陶芸作家の作品にイタリア料理、日本料理、中国料理、それぞれの世界で第一線で活躍する3人の料理人、日高良美、野崎洋光、河田吉功(敬称略)が、器と対峙し、料理を作って盛り付ける、そして、それぞれについて3人が自分の作品も含めて器のこと、仕上がりについて批評するというもの。器の写真→料理の写真とシェフのコメント→陶芸家の紹介と料理が盛り付けられた自作を見ての感想の三段仕立て。
どれも一流の人の作品なので、器や料理の写真だけでも見応えがある(ブログに載せた写真は写真が小さめのページで、1ページ全部写真っていう構成も多い)のだが、違う料理のフィールドのシェフ3人が、器を見た第一印象、何をどう盛るかを決めるに当たっての思考錯誤の過程についてのコメントが押さえられているのが素晴らしい。
眺めるだけでも楽しいし、和・洋・中の料理と皿、盛り付け方のジャンルとシェフの個性の比較がためになるし、私だったら何を作って盛るかなぁって想像するのも楽しい。
器は非常に個性的で、器というより、アートとして床の間に飾っておきたいタイプ(笑)から、どこのご家庭にも似たものがありそうなシンプルな椀やお重まであるので、「こんなユニークな形でもお料理に使いやすいものなのね」とか、「あら、お椀にパスタやワンタン、トマトスープ入れるのもありなんだー」と、日々の暮らしに役立つ。
そして、そして、巻末にはなんと各料理のレシピと各作家の作品問い合わせ先付き。いや~、この本、素晴らしい!こんなに沢山じっくり考えて料理を作った上に一品一品コメントもしたシェフもご苦労だったと思うし、それを全部まとめた学研の編集の人も、ライターの人も、大変な労力だったに違いない。すごい大作。素晴らしい本です。プロ・アマ問わず料理やフードコーディネーションに関わる人、器を作ってる人、器が好きな人は堪能できると思います。
あ、トトロはハニーからの誕生日プレゼントです(笑)